最高の言葉 “質が低い!”

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質が低い!

Google AdSense審査で送られてくる回答。

この言葉に心を折られた人も多いはず。
これは、AdSense審査の裏側を知る、たった一つの物語。

※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。

第1章 Google社 AdSense審査部

たくさんのブロガーから、毎日膨大な数の審査依頼が届く、
ここは

Google社
AdSense審査部

この部署には、誰もが一目置く部長がいる。
名を、“押江 益代”(おしえ ますよ)

彼が一目置かれている原因。
それは、
審査が非常に厳格でありながら、合否の基準が謎に包まれている
からだ。

合格の際は、静かに「よし。」
不合格の際は、腕を組んで「質が低い!」

これだけである。

また、社内でほとんどの時間をスマホを触って過ごす
正直、あまり仕事をしていないようにも見える…
それなのに、AdSense審査部の部長は長らく彼が担っている。
社長からの信頼も厚いらしい。

そんな人物の下に、私は配属された。
新入社員、てん。

第2章 初めての審査

入社して2週間。
研修など、さまざまな業務であっという間に日々が過ぎた。
ただ、さすがは世界有数の大企業、Google。
研修プログラムは完璧だった。
おかげで、入社したばかりの私でも、一通りの業務をこなす能力を習得できた。

2週間の研修終了後、私は押江部長に呼ばれた。

押江
「てんくん、お疲れ様。研修期間も終わったようだし、明日からは、審査を担当してもらうよ。」

てん
「かしこまりました!頑張ります!」

次の日…

初めて審査するブログ。
ブログのサイト名は、【びっくりブログ
私は研修で得た知識を総動員し、審査基準を確認していく。
結果は…残念ながら、合格圏内に達していない

けれど、せっかく任された大切な仕事だ。
せめて、落ちた理由を丁寧に伝えてあげたい。
「びっくりブログ」はあと一歩で合格圏内。
少し理由を教えてあげれば、次は簡単に合格できるはずだ!

私は、問題点と改善案をまとめた。

「アフィリエイト表記の欠如」
「導線設計の甘さ」
「オリジナリティが少ない」

ここだけ改善すれば合格できるし、必ず伸びる。
そう信じて回答文章を綴った。

第3章 「質が低い!」

私は、初めて審査した【びっくりブログ】の添削結果を、上司である押江部長に提出した。

押江
「…うん。なかなか良い添削と改善案だな。」
「この改善案を実行できたら、次回はきっと合格できるだろう。」

そう言ったあと、押江部長は腕を組み、一言。

押江
「だが、改善案を伝える必要はない。」
「文章には一言だけ。“質が低い”と記載するように。」

てん
「……え?」

大きな声が出た。

てん
「それじゃあ何が悪かったのか伝わりません。」
「せっかく努力してブログを作っている人に、あまりに失礼じゃないですか?」

反論した。

押江
「それでいいんだ。余計なことは伝えなくていい。」

押江部長は全く揺るがなかった。

第4章 押江 益代の噂

その日、押江部長からの指示を受けたものの、
あまりに理不尽だと感じた私は、部署の先輩たちに相談した。
先輩たちは、苦笑いで教えてくれた。

先輩A
「押江部長は昔からそう。“質が低い”だけで済ませる人だよ。」

先輩B
「そうそう。そのやり方を社長もなぜか黙認してるしね。」
「いっつも腕組んで、“質が低い”と記載すればいい!って」
「押江 益代なんて名前だけど、やってることが程遠いんだよ。」
「あれじゃ押江 益代じゃなくて、腕組 益代(うでくみ ますよ)だよな(笑)」

先輩C
「まさに、腕組 益代!ブロガーの中にはこんなもの作っている人もいるんだよ(笑)」

これを見て、てんも思わず笑ってしまった。

先輩D
「でもさ、こっちが適当に審査して、いつも通り、“質が低い”と送っておきますね。」
「なんて言うと、そんな適当な審査をしてどうする!ってめっちゃ怒られるから。」
「わけわかんないよ。」

てん
「え?怒られる?」

先輩たち
「うん。“しっかり改善案は作成しておけ”ってさ。」
「どうせ”質が低い”しか返さないのに、無駄だよなぁ。」
「あーあ、こんな部署さっさとおさらばして、Search Console部に異動にならないかなぁ。」

てん
「Search Console部って、そんなにいい部署なんですか?」

先輩たち
「あぁ、てんはまだ入社したばかりで知らないだろうけど。」
「まず、責任者が最高にいい人なんだ。幸子・インデックス(さちこ・いんでっくす)部長。」
「日本とアメリカのハーフ。記事の登録や削除をブロガーの要望通り叶える仕事を担当してるんだ。」
スマイル幸子なんて異名もあるらしい。とにかく、部署全員が笑顔で仕事してるらしい。」
「うちとは大違いだよな。そういえば、押江部長と幸子部長は同期みたいだぜ。」
「そうそう。やり方は全然違うのに、なぜか仲も悪くないんだよな。」

これを聞いて、私は、
(幸子部長なら、押江部長がなぜ“質が低い”しか言わないのか知っているかもしれない。)

と思い、相談を持ちかけることにした。

第5章 幸子・インデックス

ある日、Search Console部に申し送り事項を伝えるよう指示を受けた私は、
せっかくの機会なので、幸子部長へ相談を持ちかけることにした。

てん
「幸子部長。今、少しよろしいでしょうか?」

幸子
「あなたは、 AdSense審査部の新人?たしか、てんくん、よね?」
「押江くんから噂は聞いているわ。頑張ってるみたいね。」

てん
「え?押江部長がそんなことを?」
「実は、その押江部長のことで、ちょっとお聞きしたいことがありまして。」

幸子
「なるほどね。なんとなく聞きたいことはわかるわ。」
「“質が低い!”とか、腕組 益代に関係してるでしょ?」

てん
「え?えぇっと…腕組ってのはあまり知らないですが…“質が低い”って言葉には…」

幸子
「いいのよ、有名だもん(笑)でもね、その質問に関しては、私から答えられることはないわ。」
「ただ、せっかくだから1つだけヒントを教えてあげる。」
「彼はね、【腕組 益代】なんかじゃなくて、ちゃんと【押江 益代】よ。」

てん
「…すいません、あまり仰ってる意味がわからないです。」

幸子
「そうでしょうね(笑)とにかく、彼とゆっくり話をしてみて。」
「彼、言ってたわよ。てんくんは見込みがあるって。きっと、ちゃんと話してくれるわ。」

てん
「それも意外です…わかりました。押江部長に直接話を聞いてみます!」
「ありがとうございました!」

幸子
「うん!それがいいわ!」
「頑張ってね!」

幸子部長は、スマイル幸子の異名に恥じない、とびっきりの笑顔を見せてくれた。
確かにSearch Console部の人たち、羨ましいかも…

第6章 押江部長からの誘い

あれから数ヶ月が経った。

私はまだ、押江部長に声をかけらずにいる。
早く声をかけなきゃと思いながら、
あの険しい表情を見るとなかなか勇気が出ない…

そう思いながらも、仕事に関しては、変わらず、真摯に審査と、改善案の作成を続けていた。
押江部長も変わらない。
改善案に目を通し、時折満足気に頷くものの、相変わらず“質が低い”の一言しか返さない。

そんなある日、突然

押江
「てんくん、今晩、空いてるか?」

声をかけられた。

驚いた。
だが、これはまたとない機会だ。
私はすぐに「空いてます!」と返答した。

第7章 押江 益代の真実

前編

押江
「今日もお疲れ様。てんくん、君がここに来てどれくらいになる?」

てん
「もう4ヶ月になります。」

押江
「そうか…しかし君は最初からずっと変わらないな。」

てん
「え?」

押江
「丁寧な改善案の作成だよ。部署の多くの人たちは、私のやり方を見て適当になる中で、君だけは違う。」

てん
「…ありがとうございます。次は合格してほしいという思いで、毎回全力で書いてます。」

押江
「立派な姿勢だ。」

てん
「でも、押江部長がその点を評価してくださっているとは、思っていませんでした。」

押江
「当然、評価するさ。“腕組 益代”だって、ちゃんと評価はする(笑)」

てん
「腕組…って、知っていたんですか?すみません!」

押江
「知ってるさ、自分のあだ名くらい(笑)それに、君が謝ることじゃないよ。」
「今日はね、その話がしたかったんだ」

押江部長はカバンから、古びたノートを差し出した。

押江
「これを見てごらん。」

私は中をめくった。
そこには、
審査依頼のあったブログの内容の評価、
詳細まで細かく、丁寧に記述された改善案
がびっしりと書かれている。

アフィリエイト表記
構成
プロフィール改善
写真の重要性…。
どれも、ブロガーたちがAdSenseに合格しますように。
という優しさに満ちていた。
文字だけで伝わってくる優しさ。

てん
「…これを、押江部長が?」

押江
「そう。僕がこの部署に来てからずっとね。今でも全てのブログを読んで、記録しているよ。」

てん
「えっ?今もですか?」

押江
「当然!彼らは本気で審査に挑んでくる。だからこちらも本気で応えないと。」
「ほら。このページを見てごらん。」

てん
「これは!」

そこには、私が初めて担当した【びっくりブログ】の文字が。
びっくりブログ
担当:てん
初めて担当したてんの改善案は、非常に理にかなっていた。
プラスαで、〇〇なポイントを押さえると、次回はさらに合格につながるだろう。
ポテンシャルを感じる良いブログだ。諦めずに頑張ってほしい。

てん
「部長!せっかくここまで改善案を考えているなら、なぜ伝えてあげないのですか?」
「なぜ、“質が低い!”だけしか送らないんですか?」

後編

押江部長は、少し黙ってから言った。

押江
「私も、昔は全部書いて伝えていたよ。この通りに直せば合格できるってね。」
「でも、伝えた通り改善して、簡単に合格したブロガーたちは…どうなったと思う?」

てん
「そりゃぁ、モチベーションが上がってどんどん活躍してくれてるかと!」

押江
「逆だよ。簡単に合格したブロガーたちのほとんどは、ブログを辞めてしまうんだ。」

てん
「なんでですか?せっかく合格したのに!」

押江
「合格しても、すぐには収益なんて出ない。 AdSenseで最初にもらえる収益はたかが数円。」
「それで、“なんだ、ブログなんて稼げないじゃないか!” ってやめていくんだよ。」
簡単にAdSenseに合格してしまうと、自分で考える力が身につかない。」
「ブログは簡単じゃない。考える力がなければ、続かない。稼げない。
「だから僕は、あえて”質が低い!”という言葉だけにしている。何が問題なのか、考えてもらうために。」

てん
「そうだったんですね。」

押江
自分で考える人間は、調べて、改善して、質問して。主体的に動けるんだ。
そして、いつか必ず合格を掴む。そういう人が生き残るんだ。

返す言葉がなかった。
しばらくの沈黙のあと、押江部長はスマホを取り出した。

押江
「そうそう、もう一つ。これを見てごらん。」

画面には、無数のXのアカウントが表示されている。

てん
「これは?」

押江
「私の裏アカウントだよ。AdSenseに落ちたブロガーの中には、Xを利用して質問、相談する。」
「次は受かりたい!落ちた原因を知りたい!だから質問します!」
「そんな主体的な動きをする人がたくさんいるんだ。」
「さっきも言ったけど、主体的に動ける人は伸びる可能性が高い!」
「だから、匿名で、先輩ブロガーになりきって、アドバイスを送るために裏アカウントを作っているんだ。」
「このやり方は、社長も許可してくれてる。」

てん
裏アカで、アドバイスを?」

押江
「あくまで自分で“考える力”が育つ程度にね。」
「いつでも伝えられるように、全ブロガーの改善案を作ることに妥協しない。」

私は、言葉を失った。

てん
「あ!もしかして、部長が会社でスマホをよく触っている理由って。」

押江
「やはり気づいていたか。」
「そう、それは裏アカでアドバイス送っているからさ(笑)」

押江部長は、誰よりも優しかった

第8章 幸子への報告

次の日、私は押江部長の本心が聞けたことを、幸子部長へ報告に行った。

てん
「お疲れ様です!すごく時間がかかってしまいましたが、昨日、ようやく押江部長の本心を聞くことができました!」
「幸子部長の言ったとおり、押江部長は、ちゃんと【押江 益代】でした!」

幸子
「そう、よかったわね。ね、私の言った通りだったでしょう。」
「でもそこにたどり着くまでに、結構時間かかっちゃったわね(笑)」

てん
「そうなんです。実は結局、自分から声をかけることはできず…」
「昨日、まさかの押江部長から声をかけてくださって。」

幸子
「そうだったの。まあ結果としてはよかったんだから。喜びましょう!」

私は、また、スマイル幸子の本気スマイルを見た。
相変わらず、人を惹き込む美しい笑顔だ。

てん
「はい!ありがとうございます!」
「ただ…」

幸子
「ただ?」

てん
「昨日の押江部長との話、ずっと頭の中でぐるぐるしてて。」
「それで、新しく引っかかることが出てきたんです。」

幸子
「新たな疑問?」

てん
「はい、押江部長が、ブロガーたちに本心を伝えない理由はよくわかりました。」
「でも、その想いを社内で隠す必要はないかと。」
「昨日までの私と同じように、先輩たちはみんな押江部長のことを誤解しています。」
部長の本心を知れば、先輩たちもやる気になって、部署ももっと活性化されるのに。」

幸子
「なるほどね。流石に鋭い視点ね。」
「てんくんが、押江くんから期待される理由がわかってきたわ。」

てん
「え?」

幸子
「いい?それも押江くんの戦略の1つなのよ。」
「ブロガーさんたちと一緒。“自分で考えて”、“信念を持って”行動する。」
「これが、押江くんがみんなに求めていること。」
ブロガーさんたちだけでなく、部署のみんなにもね!」
「てんくんの言うとおり、彼の本心を知れば、君の先輩たちの仕事に対する姿勢が変わるかも知れない。」
「でも、それじゃダメなの。彼、言ってなかった?“主体的に”って。」

てん
「言ってました!主体的に動ける人は強いって!」

幸子
「そう。それが彼の狙いなのよ。」
表面だけ見れば、彼は適当に仕事をこなしているようにも見える。」
「だからって自分も適当でいいや。って考えじゃダメ。」
「上司が何回“質が低い!”って言葉で終わらせても、常にしっかり改善案を報告すること。」
「てんくんのようにね。彼が求めている人材はそんな人なの。」

てん
「なるほど。すごく納得できましたし、すごく押江部長らしいな!って感じました。」
「でも部長のやり方って。孤独との戦いですよね。相当な覚悟がないと勤まらない…」

幸子
「そうね。だからこそ、やっと自分を理解してくれるてんくんに出会えて、彼もきっと喜んでいると思うわ!」
「何せ、これまで彼を支えてあげた人は、一人しかいないの。相当喜んでいるはずよ!」
「これからも、彼を支えてあげてね!」

てん
「一人いたんですか?その人は今どこに?」

幸子
「さあ?それは私も知らないわ(笑)」

第9章 益代と幸子

押江
「ありがとう。君のおかげでてんくんとゆっくり話ができたよ。」

幸子
「本当に、いつも不器用な人なんだから。」
「期待してるなら、もっと早く声をかけてあげればいいのに!」

押江
「君がてんくんと話をしたって聞いてから、もっと早く彼に声をかけるべきだったんだけど。」
私もなかなか勇気が出なくてね。」
こんな話をしても理解してもらえないんじゃないかって、ね。」

幸子
「てんくんも勇気が出せず声をかけられなかったって言ってたし、似たもの同士ね(笑)」
私が押江くんをプッシュしてなかったら、まだ二人は話せていなかったんでしょうね(笑)」

押江
「面目ない…」
「本当に君のおかげだ。いつもありがとう。」
君にはいつも支えてもらっているよ。」

幸子
「本当よ!あなたのやり方のせいでストレスの溜まったみんなを励ますために、癒しスマイルの練習までしてるんだから!」

押江
「おかげで、スマイル幸子なんて、素敵な異名をもったじゃないか。」
「僕なんて、腕組 益代呼ばわりだぞ(笑)」

幸子
「まあそうね。悪い気はしてないわ(笑)」

押江
「ところで……あの、その。幸子…さん…」
「ええっと、てんくんに理解してもらうことができたら、君がデートしてくれるって約束の話なんだけど…」

幸子
「もう!それは腕組みながら自信満々に言うべきセリフよ!(笑)」

最終章 それから…

あの日から1ヶ月後。

今日もAdSense審査部には、たくさんの審査依頼が届く。
私はいつも通り。
丁寧に審査を続ける。
結果は…残念ながらあと一歩というレベルでの不合格。

でも本当にあと一歩だ!
次は絶対大丈夫!
私は誰よりも細かい改善案を作成した。

てん
「押江部長。今回のブロガーさん、残念ながらまだ合格には届きませんでした。」
「でも、とても魅力的なブログでした!」
「諦めずに続ければ、きっとうまくいくと信じています!」

押江
「そうか。ご苦労様。では不合格通知メールの準備を。」
「書く言葉は、わかっているだろう?」

てん
「はい、“質が低い!”ですね!」

押江部長のように、私も腕を組みながら言った。
押江 益代が少しだけ笑った。

最近の、私と押江部長のやり取りを見て、部署全体の雰囲気も変わりつつある
先輩たちが押江部長の陰口を言っている姿もあまり見かけなくなった。

何より、幸子部長のスマイルで会社全体が癒されていることが大きい(笑)

そして…
私がXの裏アカウントを3つ作成したことは、まだ押江部長に秘密にしている。

さあ、今日も帰宅後に裏アカを利用して、改善案を送ってあげよう
世界中のブロガーたちへ向けて伝えるんだ!

がんばれ!!!

そして

質が低い!!!

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